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フローズン カクテル

♪ クリスマスツリー

 1

デイズニーランドのワールドバザール中央に飾られた大きなツリークリスマス

ボクは そのすぐ脇にあるベンチに腰掛け
ぼんやりとそのツリーを眺めていた

「もぅ何十年になるのだろう・・・?」
この大きなクリスマスツリーは 毎年ボクに クリスマスを運んできた・・・ぴかぴか(新しい)

大きなクリスマスツリーの下には たくさんのプレゼントが積まれている
その周りでは ツリーをバックに 最愛の人をカメラに収めようとする人たちの群れが幾重にも輪を作っていた

ボクは 先ほどから 
その穏やかな光景を ぼんやりと眺めていた


ボクの正面には たくさんの風船を持った『風船売り』がいた
子供たちが買いに来ると、腰をかがめて選び易くしている
その度に たくさんの風船が上下して・・・ 揺れた・・・
ミッキーが・・・
ミニーが・・・
ディズニーのキャラクターたちが・・・
まるで子供たちを誘いこむように・・ ・
揺れた・・・



 

ひと組の老夫婦が ボクのベンチのそばまで来て止まった
「おまえは ここに座って待ってなさい」
ボクの隣のスペースを見ながら 淡々と言った

背の高い シャンとした紳士だった
言葉に従い、奥さんが ボクの隣に腰を下ろすのを見届けると
「すぐ戻るから」と言い、足早に消えた

疲れたのだろうか?
ほぅ~とため息をつくと、ベンチに深くもたれ 目を閉じた
その横顔は美しく とても品がある
80近いと思われるのだが、この夫婦には品があった

しばらくして奥さんは、クリスマスツリーを眺め始めた
幸せそうな遠い目をして眺めている・・・
ボクは 辺りを眺めるふりをして、さり気なく奥さんを観察していた

やがて奥さんは、風船売りに目を留めた
上下に揺れ動くたくさんの風船たちに興味を持ったのだろう
カノジョの視線は 風船売りに釘付けになっていた

ボクは、その視線を いつか見たことがあった
遠い昔、ボクは その視線を、確かに何度か見ていた・・・

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 3

長男が まだ3歳頃
クリスマスの日、ボクは妻と3人で ディズニーランドで遊んだるんるん

妻も若く、ボクも若かった
たいした乗り物に乗った訳じゃなかったけど、楽しかった
親子3人のクリスマスを ディズニーランドで満喫して帰ったぴかぴか(新しい)チャペルぴかぴか(新しい)

家へ着くと、先ほど買った大きなミッキーのぬいぐるみを抱いて寝ている長男を見ながら、ボクは満足気で妻に尋ねた
「フックン、楽しそうだったね♪ いっぱい喜んでたねぴかぴか(新しい)
するとカノジョは 残念そうに こう答えた
「本当は 風船が欲しかったんだって!」
「風船?」
「あなたが 高いからダメだ!って言った、あの風船!」
「・・・・・」
ボクは さほど覚えてなかった

妻の話しによると長男は、風船売りの前にくると
何度か 「買って欲しい」と ボクに頼んだそうだ
だけど初めてのディズニーランドに興奮していたボクは
長男と妻をそっちのけで写真を撮ったり、パレードを追いかけたり・・
カメラに向かってポーズをつけさせたり・・・
とにかく妻に言わせると、最悪の父であり、亭主であったそうだ台風(笑)

「ふ~ん・・・」
その時のボクは 興味もなく聞いていた


 4

翌年のクリスマスは 長男と二人で来たクリスマス
妻は 出産したばかりなので、長男と二人でディズニーを楽しんだ
去年のリベンジを果たすべく、ボクはカレに風船を買い与え、意気揚々と帰宅した

翌日、二男を抱いて庭を見ていた妻に 得意げに尋ねた
「どぅ? フックンは 喜んでいた?」
すると妻は、少し悲しそうな顔をして こう答えた
「風船を持って 歩きたかったんだって!」
「?????」
ボクには 意味がわからなかった台風

妻が説明するには、
ディズニーランドに入ってスグに カレは風船を懇願したしたらしい
だけどボクに「邪魔になるし、楽しめないから後にしなさい!」っと一括されたらしい

そう言えば、長男は 風船売りの前を通ると何度か
「邪魔にならないようにするから・・・」と、頼んでいたような気がする‥
ボクは その度に「風船は 邪魔になるから 帰りに買おう!」と、
カレに言い聞かせていた・・・

その時のボクは、妻からのそんな話を聞いても
ずいぶん解らない息子だと 逆切れをしていた記憶がある・・・

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    5

二男が2歳になったクリスマスの年は、ボクも学習していた!

ゲートをくぐり クリスマスツリーの下の風船売りを見つけると
スグに長男に聞いた 
「どの風船にしようか?」
長男は戸惑っていた・・・
「どれでもいいよ・・・」 
長男からは、期待外れの答えが返ってきた
ボクは ミッキーの風船を選ぶと 
カレには渡さず乳母車にくくりつけた


 6

兄たちとは歳を置いて 娘が生まれた
その頃は ボクは単身赴任で地方の支店で働いていたので
ディズニーランドどころではなかった

娘が4歳の冬、地方から本社に戻ったボクは
久しぶりにディズニーランドでクリスマスを過ごすことにした

ディズニーランドは 洗練されてきており、その煌びやかさは 
まさに『夢と魔法の王国』と呼ぶにふさわしかったぴかぴか(新しい)
夢のようなクリスマスパレードや華やかなショー
大きなクリスマスツリー
娘は 夢の国のお姫様に すっかり成りきっていた

そんな娘の動きが止まった
風船売りを見つけたからだ

メグは、すぐには駆け寄らなかった
カノジョは 一歩、一歩 ・・・
大切なものを捕える猫のように
風船売りに近づいた

娘の瞳は 輝いていた

「どれがいい?」
ボクが聞こうとした瞬間 メグと目が合った・・・
そして カノジョは視線を外すと、 
ボクでなく、母親のもとに駆け寄って ねだった

「そんなの邪魔になるから駄目だよ!」 長男が言った
「高いからダメダメ!」 二男も続いた。
「そんなの買ったって、明日には しぼんじゃうんだぜ!」
長男と二男が 矢継ぎ早に言い放った

娘の夢が 弾けて割れる音がした

やっとの思いで 娘の気を取り直させ、風船を選ばせた
メグは ミッキーやミニーを選ばずに
何だかわからないようなキャラクターを選んだ
「メグ! いつまでもすねてないで、きちんと選びなさい!」
ボクは カノジョを軽くたしなめたむかっ(怒り)
カノジョは とても悲しい顔をしてボクを見ると
シンデレラ城の方へと 走って行ってしまった

妻から後で聞いた話だと、
あれはあれで人気のあるキャラクターだったらしい(笑)
ミッキーとミニーしか知らない当時のボクにとっては
娘が自暴自棄的に当てつけで選んだのかと思い
叱ってしまったが、どうやら間違いだったようだった・・・台風

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  7

娘が7歳の時、七五三のお祝いでディズニーランドに来た
双方の両親の手前、きちんと神社にはお参りをしたが
ボクにとっては シンデレラ城に手を合わせる方が
なんとなくご利益があるような気がしていたからだ(笑)

「千歳飴の代わりに 風船を持とう!」
ボクの独断で カノジョは風船を持つことになった

近くの風船売りのお姉さんのところで風船を選ばせた
メグは どれにしようかと、一瞬本気で迷ったようだが
ふと我に返り、ボクの視線に気づき、ミニーを選んだ(笑)
カノジョは もぅ分別の付く年頃になっていたので
きちんとミニーを選んだのだ(笑)

シンデレラ城前の撮影スポットは 10分ほど列ができていた
順番がきて 妻がカノジョのドレスを直していた時に
カノジョの手から 風船が放れた
ドレスに気を取られ、風船を放してしまったのだあせあせ(飛び散る汗)

「あ~げっそり
順番を待っていた多くの人や、スタッフや、通りがかりの人・・・
風船が舞い上がった瞬間を見た人たちから一斉に 声が漏れたあせあせ(飛び散る汗)

『怒られる!!』
そんな目をして、メグはボクを見たあせあせ(飛び散る汗)
そして、写真も撮らずに シンデレラ城に向かって
走って逃げて行ってしまったダッシュ(走り出す様)

残されたボクには 娘を追う妻も
青空に吸い込まれた風船も
二度と見つけることはできなかった・・・


  

「お待たせほっとした顔
白昼夢は 先ほどの老夫婦のご主人の声で破られた

奥さんは 嬉しそうに顔を向けて 立ち上がろうとした
「待って!」
ご主人は 片手で奥さんを座ったままにして、またベンチを離れた

ご主人は スグに戻ってきた
「はい! ・・・おまえが見ていたからね」
ご主人の手には 風船が握られていたハート

奥さんは 嬉しそうに風船を受け取ると 
少女のような微笑みをご主人に返した

ご主人が手をさしのべた
奥さんは その手を握り、立ち上がると
放さずに そのまま歩き始めた
右手はご主人と手をつなぎ
左手には 可愛い猫の風船が握られていた

人ごみは すぐに二人を消した
でも 白い猫の風船だけは いつまでもボクの視線の中にいたぴかぴか(新しい)

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「おじいちゃ~ん! 待った~ほっとした顔わーい(嬉しい顔)ほっとした顔
ボクの胸に 孫たちが飛び込んできた
手には いっぱいディズニーの袋を抱えている

先ほどまで品のいい奥さんが座っていた場所にメグが座った
「お父さん、待たせてごめんね」
すっかりお母さん業が板についたメグが言葉を続けた
「お父さんと来るのって、何十年振りだろうね?」

「お母さんは元気か?」
「相変わらずよ(笑) 今日も、お父さんが来るなら 来ないって!」
メグは そう言って、また笑った
ボクは 苦笑いを返しながら 立ち上がり、
そのまま風船売りのそばまで行って 風船を買った

メグの前に戻ると、先ほどの紳士のように メグに風船をさしだした
「あたしに? ・・・」
メグは 一瞬ためらったが、嬉しそうに風船を受け取った

「それにしても...なに? このキャラ?!」
「おまえは昔から 趣味が悪かっただろう!?」
「それにしても~ ・・・(笑)」
メグの左手には 目が三つある緑色したキャラの風船が握られていた
「おまえには お似合いだよあっかんべー(笑)」

「ありがとう お父さん」
メグは右手でボクと手をつなぐと
ボクの手を引いて、シンデレラ城の方へ向かい始めたハート

遠くから鈴の音が聴こえてきた
まもなく2回目のパレードが始まる
夢と魔法の王国『ディズニーランド』

ボクたちを大きなクリスマスツリーが 
今年も見守っていた・・・

 

BGM 『星に願いを』 by ビリージョエル

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DJテントン「フローズンカクテル」

♪ クリスマスツリー